Vol.1「CNC化への道」[第一章]世界マーケットのニーズに応えて 加工専用機のCNC化×複合機化を実現。

数値制御(NC)からCNC化へ 業界全体が躊躇する中、技術革新を提案。

 

 1980年代、円高による輸出の増加に伴い、自動車産業はまさに国際化時代を迎えていました。生産量が増えるにつれ、エンジンの中核部分を担うピストンリングも、より高精度の品質が求められていましたが、加工専用機に関しては、未だコンピュータ制御化(以下、CNC)が実現していなかったのです。
 その頃、汎用機はすでにCNC化が定着。汎用機製造メーカーとして創業した片岡機械製作所でも、当然のようにCNCを搭載した汎用機を制作していました。そんな経緯もあり、CNCの開発技術を蓄えていた片岡では、ピストンリング加工専用機にもCNC化が急務だと考え、あるリングメーカーに加工専用機の技術革新を提案。しかしコスト面を含めたリスクの大きさを前に、その新技術に対してメーカーどころか業界全体が消極的だったのです。
 しかし、当時主流だった数値制御のピストンリング加工専用機は、気候や時間帯にょって油圧に微妙な温度差が生じ、送りの量やスピードなどが変化するという問題を抱えていました。CNCならば細かな数値設定が可能となるため、油圧の温度変化に左右されることもなく、品質は均一化し、生産量も安定します。生産管理のしやすさを考えても、リング加工専用機のCNC化はもはや不可欠でした。「CNCで新しい道を切り拓きたい」—その一心で、片岡はメーカーを説得。コスト面からアプローチし、CNC化したピストンリング加工専用機の開発、受注生産へと漕ぎ着けました。

 時代を察知し、メカロス低減に挑みながら、  CNC搭載の複合機「R-7MG」が誕生。

R-7MG  

 折しも、時代は省エネルギーや環境問題へと関心が高まりつつありました。部品メーカーでは、機能や品質の向上、コスト低減が重要課題となり、片岡でもそのニーズに対応可能な加工専用機が求められました。低燃費で耐久性が強く、且つ排ガスクリーン度も高いエンジンを実現するには、ピストンリングの形状を、より複雑加工しなければなりません。単純形状なら1枚の砥石でリング研削できますが、複雑になるほど一度では加工できない。かといって工程を分ければ、複数の機械が必要となり不合理です。
 そこで片岡は考えました。「1台の機械に2枚の砥石をセットし、最初の形状は前方の砥石で研削させよう。それが終わったら砥石ヘッドを横へシフトさせて、2枚目の砥石で残りの形状を加工すればいい」—。1台の機械がCNCによって砥石をシフトさせ、順序立てて加工するという、革新的な手法を発案したのです。こうして汎用機制作にはじまり、ピストンリング加工専用機の開発で培ってきた技術やノウハウを基に、CNC全自動ピストンリング研削盤「R-7MG」が誕生しました。「R-7MG」は作業効率および投資効果の点でも優れ、1991年の1号機販売以来、ベストセラーとなっています。

 さらなるCNC化への挑戦。  次は難易度の高い楕円加工機開発へ。

ピストンリング  

 「ピストンリングを加工する際、初期工程で内径と外径を楕円加工するが、それをCNC化できないだろうか」。
 CNC制御を搭載した「R-7MG」の実力が業界に広まりつつある頃、国内のピストンリングメーカーの生産技術者から、片岡に新たな相談が持ち込まれました。長らく、楕円加工の専用機は、ドイツやスイスが手掛けるメカニカル制御タイプが主流でした。これは、加工機にモデルリングをセットし、その曲率の回転軸の動きと回転速度を基本に、それと平行した動作で研削をかけてモデルと同一形状のリングを加工するという方式のもの。しかし、リングの曲率は非常にデリケート。砥石の刃を一定に当てて加工する真円と違い、楕円は中心軸の回転のし方次第でズレが生じるため、品質を均一化させるためにはミクロン単位の調整が不可欠です。しかも新製品の受注が入るたび、新たな曲率のモデルを作り直して交換する必要性があり、モデル自体をお客様の要望通りに仕上げるまでに、トライ&エラーを繰り返さねばなりません。生産効率の改善を考えたとき、「楕円加工機のCNC化の必要性」は片岡でも早くから議論していましたが、楕円の曲率に合わせた回転軸の動きや刃の速度をCNCで確立させるのは、容易なことではなかったのです。
 そこで片岡では、楕円加工機のCNC制御用ソフトウエア開発をすべく、専門の技術者と共に様々な角度から検証。修正と計算を重ねながらソフトウエアを構築し、半年後にはCNC半自動ピストンリング内外径カム旋削&合口ミーリング複合機「DCM-1」として、製品化を実現しました。

 お客様のニーズに限りなく近づけ、  それ以上のものを提案する“開発魂”。

DCM-1   DCM-1
   
 

 内径と外径をそれぞれ楕円加工するだけでなく、合口をミーリングで加工するという2工程を、1台に集約した「DCM-1」。この誕生で、リング交換に伴うプログラミングの変更が簡単に行えるようになり、また、加工プロセスも大幅に縮小できました。こうして、お客様の求める数値に対し、より正確でスピーディーな対応が可能となったのです。その後、片岡では新たに「DCM-1A」を開発。「DCM-1」にロボットシステムを搭載した「DCM-1A」は、一度機械をセットアップすると、同型番のリングを長時間、継続的に生産することを実現しました。あるメーカーが「DCM以外では、加工できない曲率のリングがある」と言ったほど、「DCM」シリーズの加工精度と機能性は、高く評価されています。
 “CNC化”という片岡の技術革新は、加工製品自体の高品質・短納期を実現し、メーカーだけでなくユーザーへの付加価値をも生み出しています。最初は、「ドイツやスイスのメカニカル制御機械と、同等かそれ以下の価格で」という要望のもと、開発が始まった「DCM-1」。自動車産業の世界的なグローバル競争により、エンジン部品メーカーでもコスト面を考慮しながら品質を向上させ、生産力のスピードUPすることが、これからの課題です。そんな昨今の時代の潮流に合わせ、片岡では、よりコストパフォーマンスの高い加工専用機の開発を目指します。

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Vol.1 CNC化への道|第一章|
Vol.2 CNC化への道|第二章|
Vol.3 CNC化への道|第三章|
 

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